映画『ドリーム』を観てきました.
実話に基づいた、3人の黒人女性とNASAのマーキュリー計画にまつわる作品です.実話に基づいた、とはいえさすがに映画化するにあたって多少の脚色などは入っているようですが、3人とも実在の人物であり、実際にNASAで多大なる功績を残したことは事実です.
また、日本での映画タイトルが当初『ドリーム 私たちのアポロ計画』という、どこから持ってきたのかわからない「ドリーム」という言葉やら、マーキュリー計画なのになぜか関係のない「アポロ計画」という言葉が使われており批判されていましたが、さすがに意味不明な「私たちのアポロ計画」という言葉は取り払われ、「ドリーム」という言葉だけになりました.原題は「Hidden Figures」で、Hidden(隠された)Figures(人影)という裏方として働いていた黒人女性の話にあっている(しかもFiguresには数字という意味もあるので計算係や数学者として働いていたという意味合いにもつながっている)ので、これを生かしたタイトルにできなかったものかと感じました.
邦題の問題はさておき、内容は素晴らしかったです.舞台は1960年代のNASA.宇宙衛星や有人飛行など宇宙開発においてソヴィエトに先を越され追いつこうと躍起になりマーキュリー計画に取り組みつつも内部では白人と有色人種では食堂やトイレなどもすべて分けられるなど差別が残されており、その中で優秀な3人の黒人女性がいかに差別や組織の壁を残り超えていくかというのが大きなテーマとなっています.
肌の色による差別だけでなく男女による差別というのも大きく扱われており、例えば黒人男性が主人公の一人である黒人女性に対して不用意な発言をしたり、エンジニアとしてNASAで認められるために必要な教育課程を受けるのに白人のみ入学できる学校が指定されており受講しようとすると女性に分かる内容ではないといわれてしまうなど、随所にそうした出来事が出てきます.
そうした差別的要素を高度な計算能力という数学の力や、当時最新鋭のIBMメインフレームの性能にいち早く気づいてFORTRANをマスターして壁を乗り越えていく、それがこの映画の醍醐味でしょう.肌の色や性別に関係なく数学/数字は正義である、それを武器に認めざるを得ない存在になるという格好よさは観ている側に痛快感を与えます.