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映画『TENET テネット』を観に行ってきました.
予告編だけ見た状態で行ったのですが、内容の理解が半分くらいしかできず、その後YouTubeでネタバレありの解説動画を見てなるほどとなんとなく理解し、2度目を観てさらにパンフレットを読んで、ようやくおおよその話が理解できました.
(ここから先はネタバレがあります)
主人公は「名もなき男」.CIAのエージェントだったことは明かされますが、主人公なのに名前すら不明です.
「名もなき男」とパートナーである「ニール」を中心にして、未来の人間が送り込んできた世界を破滅に導く装置とそれを操ろうとする男から第三次世界大戦を防ぐというのが大きな話の流れです.
話としてはSFサスペンスものとしてよくありそうではあります.ただし、非常にややこしいのは時間の流れが「逆行」すること.しかも通常の時間の流れ(順行)と逆行が同時に進行することで見ている側としては非常に混乱します.途中のカーチェイスのシーンでは主人公たちの乗る車(順行)に対して敵が後ろ向きに走ってきて襲撃し(逆行)、さらにその最中に目の前でひっくり返っていた車が突如回転しながら元の姿になって動き始める(逆行)、しかもそのひっくり返っていた車には逆行してきた主人公が乗っていて同じシーンに順行と逆行で同じ人物が存在するなど、もはやわけがわかりません.
クリストファー・ノーラン監督の作品は時間の流れが複雑なものが多く、「インセプション」では夢の中では時間の流れがゆっくりになるという前提で、夢の中でさらに夢を見て…… という多段構造で複雑な時間の流れを表現し、「インターステラー」ではブラックホールによる重力の影響で時間の流れが変化し親子の年齢差が逆転してしまい、「ダンケルク」では時間の流れは同一ながら3つの場所の起点となる時間をずらして物語の終わりで同一時間に合わせるなど、一筋縄ではいかないです.そこが好きな人にとってはたまらないところでもあるのですが.
映像自体、いったいどうやって撮影したのだろうかと思えるようなものが多く(細かくパートを区切って、順回し再生用と逆回し再生用を撮影しているのでしょうけど撮影現場が混乱しそう)、いつもながらクリストファー・ノーラン監督の作品は手が込んでいます.手が込んでいるといえば、SFX的なものを好まない監督ということもあってボーイング747を建物に突っ込ませるシーンは現物を突っ込ませて撮影したのだとか.ミニチュアの外見と撮影用のセットを作るコストよりも廃品になった747を買ったほうが安かったとはいえ、なかなか普通はやらないものです.
COVID-19の影響により映画館にくる人が減少してしまい、海外では大きな映画館チェーン店が一時閉鎖に追い込まれるなど映画産業自体が苦境に立たされています.TENETも本来であればもっと多くの観客を呼び込める作品であると思うのですが、自分が観た回は平日の昼間とはいえ数十人程度しかおらず寂しい限りでした(観る側としては人が少ない方が安心できるのですが).できればもっと多くの人に観てほしい作品だけに、この状況はやや残念です.