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貴島孝雄さんの『ロードスター的幸福論』という本を読みました.
貴島さんは二代目と三代目のロードスターの主査(開発の責任者)を務めた方であり、初代ロードスターにもシャシーの設計に携わるなど、ロードスターの開発の重責を担ってきた方です.
今はマツダを定年退職し、大学で教鞭に立つ貴島さんがロードスターを中心に今までを振り返ったのがこの本です.
マツダは規模的にはさして大きくない自動車メーカーですが、RX-7からRX-8に続くロータリースポーツカー、そしてロードスターというライトウェイトスポーツカーという2台のスポーツカーがあります.この規模の会社でなぜこういう売れ筋でもないマニアックな車が2台もあるのか(まあ、RX-8はもうすぐ販売終了してしまいますが・・・)不思議だったのですが、
・スポーツカーを作りたいという開発スタッフが少なからずいたこと
・それを上長を含む会社が残業や休日出勤ならばと認めたこと
・一般的な乗用車としての設計からはずれたようなこと(製造面で手間やコストがかかるようなものであっても)ある程度は通せる環境があること
というようなことから作り出せたそうです.この貴島さんにしても、本業は商用車の開発で、その傍らでロードスターに携わるという、トヨタなどでは絶対にあり得ないような兼務をしていたそうです.
こうしたマニアックなスポーツカーを作るような環境って、規模の大きな自動車メーカーになるにつれてどんどん厳しくなってくるのではないでしょうか.スポーティーなイメージで売って大きくなったのに、今では売れ筋のミニバンとかコンパクトカーばかり作っているメーカーとかもありますが、社内スタッフ的にはスポーツカーを作りたくてもマーケティングや経営側が首を縦に振らないとかあるのではないのかなと思います.
ところで、主査を務めた貴島さんが語るロードスターの内容から、どこに重点を置いて開発したか、逆にコストなどの理由で手をかけられなかった箇所がなんとなく見えてきたような感じがしました.
たとえばサスペンション.初代からロードスターはフロントに「ダブルウィッシュボーン」という複雑な形状をしたサスペンションを採用してきました.本来ならばコスト的に役員の許可がおりないようなものであるにも関わらず強引に通してしまうなど、深くこだわったものであることがわかります.ダンパーもビルシュタインの採用にあたっては社内基準を無視してまでこだわったとあります.
逆に「主査としてコスト面に気を遣うことの例」として、ボディ剛性をあげているのが気になりました.たしかに剛性の弱さを気になることはあるので、これから手を入れて行くにあたって大きな参考になると感じました.
こうして手塩にかけて育てたロードスターですが、貴島さんも二代目、そして現行の三代目を購入されたそうです.自動車雑誌かなにかで目にしたのですが、主査だからといって自分の手がけた車を買う人は決して多くはないのだとか.そういう点からしても、いかに愛着をもっているかがわかります.
最後に余談ですが、自分の乗っているロードスター、三代目、NC型のマイナーチェンジモデルなので「NC2」なんて勝手に呼んでいたのですが、実際にNC2というのが正しいようです.